インボイス導入反対署名が36万人突破! 免税業者に誹謗中傷の嵐。混乱と分断を招く希代の悪法【篁五郎】
◾️Amazonや楽天で買った荷物がインボイスによって届かなくなる?
続いては、建交労軽貨物ユニオン執行委員長の高橋英晴さんから軽貨物業界のアンケート結果(回答66)が発表された。ご存知の方も多いだろうが、Amazonやヤマト運輸、佐川急便で荷物を運んでくれる運送業者は、個人事業主として業務委託契約を結んで働いている人が多い。もちろん彼らもインボイスに登録すれば消費税を納税しなくてはならない。彼らの売上平均は年間で500万円ほどだ。
その中の99.9%がインボイスによって税負担が大きくなるという。アンケート結果では、インボイス登録申請をしていない人が60.4%、申請した人が39.4%にも及んだ。登録した人の中には「取引先からいわれた」が21.4%、「登録しないと取引先から不利益な扱いを受けるかもしれない」が25%もいた結果が出ている。
インボイスについて「インボイスの撤回・中止」が89.4%、「延期」が7.6%とほとんどが中止・延期を求めている。インボイスが始まれば、「2023年中に廃業するか、廃業を検討している」が7.6%、「緩和措置が終わる3年間の間に廃業または廃業を検討する」との回答した業者が33.3%もいた。
2024年問題によって働き手不足が懸念される運送業はインボイスによってさらなるダメージを受けるであろう。
◾️国の根幹を支える人たちから出てくる「インボイス反対」の声
その後も、島根県の山の中で繁殖和牛2頭とコメづくり1.4ヘクタールの小さな農家をしている方からインボイス反対の声が上がった。ただでさえ、燃料費や家畜の餌代の高騰によって苦しい状況なのにさらに苦しみが増えてしまう。インボイスでみんなが農業をやめたら38%しかない食料自給率は一気に下がってしまうと訴えた。
職人さんが高齢者ばかりで若者が入ってこない建築業界でも嘆きの声が出ている。家やビルなどを建てる際、見積もって仕事が決まるまで1カ月から1カ月半、ないしは2カ月かかる。見積もった金額が工事が始まるときには資材の値段が上がる可能性があるのが現状だという。しかし建設業界も生き残るために受注しないとならない。そのため価格は据え置きで行くことも多い。値上がり分が価格転嫁できない上に消費税の納税が入ると事業者としてやっていけない業者が多いそうだ。
今のままインボイスが導入されると廃業する職人さんや出てきてしまい、建物のメンテナンスもできなくなる。メンテナンスはロボットではできない部分があるのでインボイス制度は反対だと声を上げた。
国の根幹をなす農業や建築業からもインボイス反対の声が出ている。他にも競馬産業の立場から全国競馬産業労働組合連合会事務局長や司法書士の立場から全国青年司法書士協議会副会長が反対の登壇をした。これが今のインボイスを巡る事業者からの声だ。
最後に湖東京至税理士から「世界標準である「納税者権利憲章(課税・納税手続きにおける納税者の権利を制度的に保障する基本的な法律)」が日本にはない。この状況でインボイスを導入するのは何百万といる零細事業者を苦しめるだけ」と述べた。
記者会見と同じ日に制度開始を前に事業者に寄り添った対応を求めたと岸田首相は語ったが、「インボイスは中止か延期にして!」という声は聞こえないのだろうか。
文:篁五郎